結論:AIエージェントとロボットの連携で成果を可視化
旅行大手の株式会社エイチ・アイ・エス(HIS)は、法人出張に関する見積もり作成およびメール返信業務において、AIエージェントとロボットを統合したソリューションを導入しました。これにより、拠点における対象の業務時間を月100時間削減することに成功しています。
生成AIの業務適用において「どこまで任せるか」「安全性をどう担保するか」が多くの企業で課題となる中、同社は対象業務の条件を明確にし、人間の確認プロセスを組み合わせることで、確実な成果を上げています。
導入の背景と確認された具体的な成果
HISが構築した見積もりメール自動化ソリューションは、2026年4月半ばに運用の本格開始が行われた。現場での試行と調整を重ねた結果、運用の進展とともに着実な成果が数値として表れています。
段階的な運用と1000件中約400件の無修正送付
導入から数カ月が経過した2026年7月時点のデータによると、処理対象となったメール1000件のうち、約400件においてAIが生成した返信文面を人間が手作業で修正することなくそのまま送信できるレベルに到達しました。
AIが生成した回答の精度向上により、オペレーターは確認作業のみを行う体制が整い、1件あたりの処理時間を大幅に縮小させています。この成果を踏まえ、同社は2026年8月から本ソリューションの利用範囲を関東地区の全顧客へと拡大させています。

業務対象を「単純往復」に絞り込んだ戦略的アプローチ
本施策において高い処理精度と安全性を維持している要因の一つが、適用範囲の明確な絞り込みです。現在、自動化の対象は出発地と目的地をシンプルに移動する「単純往復」の案件に限定されています。
複雑な周遊ルートや特殊な条件が絡む見積もりは従来通り担当者が対応し、パターン化しやすい「単純往復」をAIエージェントとロボットに任せることで、導入初期のリスクを抑えつつ効率化のインパクトを最大化しています。
安全性とガバナンス:顧客情報導入時のハードル克服
企業のバックオフィスや顧客対応に生成AIを組み込む際、最大の障壁となるのがセキュリティとプライバシーの確保です。AIに顧客情報を扱わせる場合、社内のAI利用規定や企業のセキュリティ上の制限が大きな関門となります。
HISにおいても、顧客情報の取り扱いやシステム連携における安全性への懸念から、社内手続における厳格な基準が求められました。これに対し同社は、大手金融機関での採用事例などを基に稟議を通した経緯があります。
実績のある安全なフレームワークを根拠にガバナンスの壁を乗り越えた事例として、他企業の生成AI導入検討にとっても重要な参照点となります。
今後の展望と課題:月300時間削減に向けた展開
拠点業務で月100時間の削減を達成したHISですが、今回の施策は自動化構想の初期段階にあたります。同社が掲げるフェーズ1の目標は、月300時間以上の削減です。
対象顧客を関東地区全域に広げたことで、処理件数の増加とそれに伴う削減時間のさらなる拡大が見込まれています。今後は「単純往復」における精度向上を維持しながら、どの段階で適用範囲を広げていくか、また人間の介入度合いをどのように最適化していくかが注視されます。
まとめ
HISの見積もり自動化事例は、明確なスコープ設定(単純往復への限定)と、セキュリティ上の制限をクリアした取り組み、そしてAIとロボットの適切な役割分担によって実利を生み出した先進的なケースです。
フェーズ1の目標である「月300時間以上の削減」に向けた今後の運用拡大と、業務効率化の推移が期待されます。


コメント