AI学習への利用意向を「一括指定」する共通の仕組みが登場
2024年10月30日(現地時間)、米OpenAI、米Google、米Microsoftの主要AI企業3社は、Webサイト運営者が自社コンテンツのAI学習利用に関する意向を複数のAI企業へまとめて伝えられる共通の仕組みに対応する方針を相次いで発表しました。また、米Anthropicも同様に実装を進めていることが確認されています。
これまでWebサイト運営者は、AI企業ごとに異なるWebクローラーの拒否設定(User-Agent)を個別に記述する必要があり、管理の手間と複雑さが課題とされていました。今回の共通フレームワークの導入により、単一の指定で複数の主要AI事業者に対して一元的に意図を表明できるようになります。
設定方法と「AI学習」の定義:robots.txtによる一括制御
今回提案された仕組みは、Anthropicのケビン・ケリー氏が10月30日付でIETF(Internet Engineering Task Force)に提出したInternet-Draftで規定されています。具体的には、既存のWeb標準であるrobots.txtファイルを利用した制御方法です。
具体的には、robots.txtの「User-Agent」行に「__usage_ai-training」というポリシートークンを指定します。この設定において「Disallow: /」などを指定すればAI学習への利用拒否、「Allow」を指定すれば利用許可の意思表示が可能です。
なお、ここで対象とする「AI学習」とは、生成AIモデルの学習済みパラメータを変更するためにコンテンツを利用することと明確に定義されています。したがって、生成以外の用途だけに使うモデルの学習はこの拒否対象には含まれません。

主要AI各社の対応スケジュールと独自の追加仕様
共通標準への対応方針を表明した各社ですが、実際の適用開始時期や追加の制御機能にはそれぞれ特徴があります。
OpenAI:今後数カ月以内の早期対応を予定
OpenAIは、今後数カ月以内の対応を目指して開発を進めており、実装時に詳細を改めて公表するとしています。主要企業の中では最も早いスケジュールで対応が進む見込みです。
Google:2027年対応と独自制御「Google-Extended」の扱い
Googleは、他のAI企業とともに2027年の対応を目指す方針を示しています。また、同社が独自に提供してきた制御機能「Google-Extended」との連携ルールも公表されました。共通シグナルでAI学習への利用を拒否し、かつGoogle-Extendedを明示的に指定していない場合、Google-Extendedによる利用も拒否したものとして扱う方針です。
Microsoft:2027年2月適用開始と高度なページ単位制御
Microsoftは2027年2月1日から、Webページをクロールする際に新しい設定を読み取り、適用を開始します。同社はさらに、robots.txtに留まらない細やかな制御オプションを提示しています。
- ページ単位での優先指定:metaタグやHTTPヘッダを使ってページ単位でAI学習の可否を指定できるようにし、これらを
robots.txtの設定より優先して適用します。 - グラウンディング向け制御「DisallowExtended」:AIの回答生成時にWebコンテンツを参照する「グラウンディング」について、独自のページ単位制御を導入します。「DisallowExtended」ではMicrosoft自身が提供するサービスでの利用は認めながら外部企業向け提供のAPI等での利用を拒否できます。
- 既存設定の移行期間:既存の「NoArchive」や「NoCache」の設定を利用している運営者は、2027年3月1日までに新しい設定へ移行することが求められます。
なぜこの標準化が重要なのか
生成AIモデルの普及に伴い、Web上のコンテンツがどのようにAIの学習に用いられるかという問題は、Webメディアやコンテンツ創出者とAI企業の間で最大の懸念事項となっていました。従来の課題は、AI事業者ごとに独自の拒否シグナルやクローラー名が存在し、サイト運営者がそれらすべてを把握して更新し続けなければならない点にありました。
IETFにInternet-Draftとして提出された標準仕様「__usage_ai-training」を各社が採用することで、Web全体の共通プロトコルとしてAI学習への利用許諾・拒否を可視化できます。これは、サイト運営者の管理コストを削減すると同時に、AI企業にとってもデータ収集を自動化する基盤となります。
Webサイト運営者・開発者への影響
Webサイト運営者や開発者にとって、中長期的なサイト管理設計においては重要な変更点となります。
特にOpenAIの今後数カ月以内の対応開始や、Microsoftが設定する2027年2月1日の読み取り開始および2027年3月1日までの移行期限は、サイトの技術仕様更新スケジュールに組み込む必要があります。また、「サイト全体で拒否するのか」「特定の重要ページのみ許可するのか」「グラウンディング用途と学習用途で区別するのか」といった自社コンテンツの運用方針をあらかじめ整理しておくことが推奨されます。
現時点で未確定の要素
共通シグナルの導入は大きな前進ですが、現時点で確認できない要素もいくつか存在します。
例えば、OpenAIが今後数カ月以内に発表する実装の具体的な技術詳細については、続報を待つ必要があります。また、IETFでのInternet-Draft提案が正式な標準規格(RFC)として成立するまでのタイムラインや、大手企業以外の新興AIスタートアップがこの共通シグナルをどの程度誠実に遵守するかについては、今後の業界動向を見極める必要があります。
まとめ
OpenAI、Google、Microsoft、AnthropicというAI開発の旗手たちが、共通のポリシートークン「__usage_ai-training」を使った一括指定メカニズムに対応表明したことは、AIとWebエコシステムの健全な共存に向けた重要な前進です。2027年に向けた各社の適用スケジュールを把握し、自社サイトのコンテンツ保護・活用戦略に合わせた準備を整えていきましょう。


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