結論:AIによる作業効率化は「売上拡大」に直結していない
AIツールの普及により、営業活動におけるリサーチや資料作成のスピードは大きく向上しました。しかし、作業が効率化されたからといって、そのまま売上や成果の拡大に結びつくわけではありません。最新の調査データによると、業務時間の短縮を実感する営業担当者が多い一方で、受注率や案件単価の向上といった直接的な事業成果を得られている人はごくわずかであることが明らかになりました。AI時代において営業成果を伸ばすための本質は、単なるツールの導入にとどまらず、AI活用と人間の対人営業力や自己成長力を組みあわせる点にあります。
「AI時代の営業力調査2026」が浮き彫りにした現実
教育テック大学院大学とウィルソン・ラーニング ワールドワイドは共同で「AI時代の営業力調査2026」を実施しました。この調査はインテージが2026年8月26〜28日にインターネット調査の形態で実施したもので、全国の20〜69歳の営業担当者841人と営業管理職216人の計1057人から回答を得ています。
調査結果によると、AIの活用が業務プロセスの時間短縮に寄与していることは明確です。具体的には、AIの活用によって資料・提案書の作成時間が短縮したと回答した営業担当者は50.9%に上りました。また、情報収集の短縮効果を挙げた割合も27.5%に達しています。
しかし、こうした効率化が営業の最終成果である事業上の結果に繋がっているかというと、厳しい数字が浮かび上がります。
- 受注率の向上を実感した割合:わずか5.2%
- 案件単価の向上を実感した割合:わずか4.6%
このデータは、提案書作成や調査の時間を短縮できたとしても、それが自動的に顧客の購買決断や取引規模の拡大を引き起こすわけではないことを物語っています。

なぜ効率化が進んでも売れないのか?
営業活動におけるAIの強みは、大量のデータ処理や文章作成、情報収集などの作業を高速化することにあります。しかし、商談の現場で顧客が購入を決定する要素は、整えられた提案書や一般的な情報だけではありません。顧客特有の深い悩みや背景を汲み取り、信頼関係を構築した上で合意を形成するプロセスが不可欠です。
AIによって資料作成の時間が浮いても、その浮いた時間を顧客との関係構築や提案内容の深掘りに使わなければ、営業成果の向上には結びつきません。ツールによる時間削減はスタートラインに過ぎず、顧客に対峙するアプローチの質を高めることが重要です。
成果を分ける「AI協働型」と「自己成長力」
では、AI時代の営業現場で高い成果を出している層にはどのような特徴があるのでしょうか。本調査では、営業担当者のタイプや意識による成果実感の違いも分析されています。
調査によると、AI活用成熟度と対人営業力の両方の水準が高い層は「AI協働型」と分類されており、この「AI協働型」においては営業成果の向上を実感した人が48.8%に上りました。一方で、AI活用成熟度と対人営業力の両方が低い層で成果向上を実感した人は17.8%にとどまっています。
また、個人の姿勢である「自己成長力」の有無も成果に大きな影響を与えています。自己成長力が高い層では、営業成果の向上を実感した割合が52.2%となり、低い層の38.6%を大きく上回る結果を示しました。
これらの結果から、AIという先進テクノロジーを使いこなす技術面(AI活用成熟度)と、人間ならではのコミュニケーションや課題解決能力(対人営業力)、そして自ら学び変化し続ける姿勢(自己成長力)を兼ね備えた人材こそが、AIの成果を実効的な力へと変換できることが分かります。
企業・営業組織が取り組むべき実践的アプローチ
この調査結果は、AIツールを導入したものの成果が伸び悩んでいる企業の経営者や営業幹部にとっても重要な示唆を含んでいます。
- AI導入の目的を作業短縮から成果向上へ再定義する:資料作成時間が短縮された後、浮いた時間をどのように顧客対話や課題リサーチに充てるかという行動指針を明確にすることが必要です。
- 対人営業力とAI教育の二軸で育成を行う:AIの使い方だけでなく、顧客の真のニーズを引き出すヒアリング力や提案力を同時に強化する教育体制が求められます。
- 自己成長を促す組織環境の整備:自発的に最新ツールを試したり営業手法を改善したりする意欲を高める組織カルチャーが、長期的な成果の差を生みます。
確認できていない課題と今後の注視点
なお、今回の調査結果では成果の明暗を分ける要因が定量的に示されていますが、具体的にどのようなAIツール(特定の生成AIサービスやシステム構成など)が使用されているか、あるいは業界ごとの詳細な差については確認されていません。自社での活用方針を策定するにあたっては、自社商材や顧客の特性に合わせて、AI活用と人による対面アプローチの最適なバランスを見極める必要があります。
まとめ:AI時代こそ「人間の強み」が成果を左右する
「AI時代の営業力調査2026」が示したのは、AIによる業務効率化は必要条件であっても、売上を伸ばすための十分条件ではないという事実です。資料作成時間を50.9%が短縮できたとしても、受注率向上を実感できた人が5.2%にとどまる現状を打破するには、AIと対人営業力を高次元で融合させる「AI協働型」のアプローチへのシフトが不可欠です。
効率化によって生まれた時間を顧客への価値提供や自身の能力開発へ投資することこそが、テクノロジーが進化する時代において営業担当者が真の成果を出し続ける確実な道筋と言えます。

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