企業向けAIにおける新たなアプローチの重要性
生成AIの活用が急速に進む中、企業システムにおいて「どのモデルをどのように選ぶべきか」という議論が活発化しています。一般的に巨大なパラメーターを持つ大規模言語モデルが注目されがちですが、すべての業務において最大規模のモデルが必要とされるわけではありません。コストやデータ保護の観点から、自社の業務に特化した現実的なAI活用を模索する動きが強まっています。
こうした中、独自のアプリケーション群を展開するZohoが示したAI戦略は、企業向けAIのあり方に一石を投じるものとなっています。本記事では、発表された具体的な技術基盤や実績をもとに、その狙いと企業に与える影響を整理します。
Zohoが展開する特化型AIと『Zia LLM』の全貌
Zohoは、60以上のアプリケーションを自社で開発してきた実績を背景に、企業の業務に特化したAI戦略を推進しています。説明にあたった執行役員 Zoho事業部長の服部英喜氏と、AI研究部門を率いるランプラカシュ・ラマムーシー氏によれば、同社は自社製の大規模言語モデルとして『Zia LLM』を開発しました。
『Zia LLM』には、13億、26億、70億パラメーターの3モデルが用意されており、用途や規模に応じた選択が可能です。すべてを巨大なモデルに依存するのではなく、業務の特性に合わせた規模のモデルを使い分けることで、効率的な運用を目指しています。
また、マルチエージェント基盤として『Zia Agents』と『Agent Studio』が提供されており、その利用実績もすでに具体化しています。2026年上半期には登録顧客数が9000社、作成されたエージェント数が1万9000件、稼働中のエージェント数が1万3000件に達しており、実際の業務プロセスへの組み込みが進んでいることがわかります。

コスト抑制を支える独自インフラとデータ保護の方針
AIの運用において見逃せないのが、インフラコストとセキュリティの確保です。Zohoは世界各地で20近くのデータセンターを自社運営しており、インド政府の政府職員向けメールやファイル管理などの基盤として選定され、110万超の政府アカウントが移行を終えています。
さらに、ハードウェアの面でも独自のアプローチをとっています。マザーボードからGPU搭載シャシーまで自社で設計した独自設計のサーバプラットフォーム『Nathu La』を開発しました。このプラットフォームは、業界大手と同等の性能を実現しながら消費電力を12〜18%、TCO(総保有コスト)を20〜30%削減できるとされています。
セキュリティとデータ主権の面では、顧客データは顧客自身のものであり、他のモデルの学習には利用しない方針を徹底しています。さらに、AIの判断根拠も説明できるようにすることで、データ主権とプライバシーの確保、信頼性の担保に配慮している点も、企業が導入を検討する上で重要な要素となっています。
国内体制の強化と今後の展望
こうした製品やインフラの展開を支える国内の体制についても、具体的な方針が示されています。ゾーホージャパンは、現在約160人の従業員を今後1〜2年で倍増させる方針を掲げており、日本国内でのサポートや事業展開をさらに強化していく構えです。
企業向けAIの選択肢において、コスト効率、確実なデータ保護、そして自社業務への適合性は今後さらに重視されるポイントになります。巨大な汎用モデル一辺倒ではないアプローチが、今後の企業IT戦略にどのような影響を与えるのか、引き続き注目されるところです。


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