急速に教育現場へ浸透するGoogleのAIツール
近年、教育現場におけるテクノロジーの活用が急速に進んでいます。検索大手Googleは、教育ソフトウェアパートナーシップを通じて、世界中で1億7000万人以上の生徒と教師に対してAIツールを含むサービスを提供しています。その導入規模は非常に大きく、例えばアメリカで3番目に大きな学区であるマイアミ・デイド郡では、2025年に10万5000人以上の高校生を対象に、GoogleのAIチャットボット「Gemini」の提供を開始しました。
このように、AIは学習を支援する便利なツールとして教育の現場に深く入り込んでいますが、その一方で、子どもの認知機能や成績に対する悪影響を懸念する保護者や教師からの反発も強まっています。
ニューヨーク市が踏み切った「AI利用の原則禁止」
こうした懸念を背景に、具体的な規制に踏み切る自治体も現れています。2026年にニューヨーク市長に就任したゾーラン・マムダニ氏は、9月2日に小中学校におけるAI利用を1年間にわたり原則禁止すると発表しました。
この禁止措置は一律にすべての利用を断つものではなく、以下のような例外や適用範囲が設けられています。
- 生徒への例外措置:障害がありAIが必要な生徒には例外が認められます。
- 教員の利用:教員による指導計画の立案や事務作業などでは引き続き利用可能です。
この決定は、教育におけるAIの役割を一度立ち止まって見直すための、極めて象徴的な動きと言えます。

懸念を裏付ける学力データとGoogle自身の警告
教育現場でのAI利用に対する反発や規制の背景には、具体的な学力低下のデータと、AI開発企業自身が過去に発していた警告が存在します。
PISA調査が示す読解力の低下
経済協力開発機構(OECD)が2025年に91カ国に住む76万人の15歳の生徒を対象にPISAを実施し、アメリカの読解力スコアが前回2022年比で14パーセントポイント低下したことが明らかになりました。この結果は、デジタルツールの普及やAIの導入が、必ずしも生徒の基礎的な学習能力の向上に結びついていない、あるいは悪影響を及ぼしているのではないかという議論を呼んでいます。
Googleの研究者らが警告していた「擬人化AI」のリスク
さらに注目すべきは、AIを提供するGoogle自身が、そのリスクを事前に把握していたという点です。2024年に発表された報告書『The Ethics of Advanced AI Assistants』の中で、Googleの研究者や倫理学者は、話しやすく擬人化されたAIが子どもにとって危険であり、「知的関心の低下」「自己効力感の低下」「社会的堕落」などを引き起こす可能性があると警告しました。
この報告書では、擬人化されたAIが子どもにとって特に危険であると指摘され、以下のような問題を引き起こす可能性があると具体的に警告されています。
- 知的関心の低下:自ら考え、探求する意欲が失われる懸念。
- 自己効力感の低下:AIに依存することで、自力で課題を解決する自信が損なわれるリスク。
- 社会的堕落:人間同士のコミュニケーションや社会的な関係構築に悪影響を及ぼす可能性。
教育とAIの未来:利便性とリスクのバランス
AIツールは、個別最適な学習や教員の負担軽減といったメリットをもたらす一方で、子どもの発達段階における認知機能や学力への悪影響という重大なリスクもはらんでいます。Google自身が警告していたリスクが、実際の学力データや教育現場での反発という形で表面化しているのが現状です。
ニューヨーク市のように一時的な禁止措置を講じる動きは、AIの教育利用における適切なガイドラインや、子どもの発達を守るためのルール作りが急務であることを示しています。今後、教育関係者や保護者、そしてテクノロジー企業は、AIの利便性を享受しつつも、子どもの健全な成長を阻害しないための厳格な運用基準を模索していく必要があります。


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