業務の30%をAIエージェントに!NTTドコモソリューションズが挑むネットワーク故障解析の自動化とセキュリティ設計のリアル

AIエージェントが稼働するネットワーク運用センターのイメージ AI・テクノロジー

はじめに:AIエージェントが現場の業務を担う時代へ

近年、生成AIの進化に伴い、単にテキストを生成するだけでなく、自律的にタスクを実行する「AIエージェント」への注目が高まっています。しかし、実際の業務プロセス、特に高度な判断や迅速な対応が求められるITインフラの運用保守において、AIエージェントをどのように実用化すればよいのでしょうか。

この課題に対し、NTTドコモソリューションズのプラットフォームサービス部は、ネットワーク(NW)の故障解析業務にAIエージェントを導入し、大きな成果を上げています。同部門は、業務の約30%をAIエージェントに任せることに成功しました。本記事では、同社が歩んできた検証から商用適用までの道のり、具体的な成果、そしてAIを安全に運用するためのセキュリティ設計や人材育成の取り組みについて詳しく解説します。

シングル構成からマルチエージェント構成への転換

NTTドコモソリューションズにおけるAIエージェントの実装は、慎重な検証と評価に基づいて進められました。同社のプラットフォームサービス部は、2025年5月にエージェントアーキテクチャの検証・評価を実施し、単一のAIで処理を行う「シングル構成」と、複数のAIを組み合わせる「マルチ構成」の優位性を比較しました。

この検証を経て、同部は2025年10月にマルチエージェント構成を採用した「NW故障解析支援AIエージェント」を実際の業務に適用し始めました。単一の万能なAIにすべてを頼るのではなく、専門的な役割を持った複数のエージェントを協調させるマルチエージェント構成にすることで、複雑な故障解析業務への適応力を高めたのです。その後、実業務での運用実績を積み重ね、2026年7月には同AIエージェントの商用適用を開始しました。

最小特権の原則と被害の局所化を表すセキュリティのイメージ

目標を上回る「復旧時間34%短縮」の成果とセキュリティ設計

このAIエージェントの導入は、運用現場に劇的な効果をもたらしました。故障解析のAIエージェントによる復旧時間の短縮目標として掲げられていた「復旧時間の30%短縮」に対し、実際の施策によって「34%短縮」という、目標を上回る結果が出ています。迅速な復旧が求められるネットワーク運用において、この短縮幅は極めて大きな価値を持ちます。

一方で、AIエージェントを実業務、特に重要インフラの運用に組み込むにあたっては、セキュリティ対策が極めて重要なテーマとなります。同社では、AIがサイバー攻撃などによって侵害されたり、乗っ取られたりするリスクを前提とした設計を行っています。

具体的には、以下の2つのセキュリティ原則を設計段階で組み込むべきとしています。

  • 最小特権の原則:どの業務をどのAIエージェントに任せ、それぞれにどこまでのデータアクセスを許可するかという、AIが乗っ取られる前提で権限を最小限に絞る設計を組み込むべきとしています。
  • 被害の局所化:役割ごとに必要な範囲に権限を絞ることで、AIが侵害されても被害はその範囲にとどまる「被害の局所化」をセキュリティ施策として狙っています。

このように、AIを盲信するのではなく、セキュリティリスクをコントロール可能な状態に抑える設計思想が、安定した運用の鍵となっています。

「AI実践レベル判定」による全社的な人材育成

AIエージェントを現場で効果的に活用し続けるためには、システム側の設計だけでなく、それを使う従業員のスキル向上も欠かせません。NTTドコモソリューションズは2026年3月1日、従業員のAI活用スキルを認定する「AI実践レベル判定」を開始しました。

この認定制度は全社員を対象としており、AIエージェントの活用によるスキルを以下の4段階のレベルに分類して評価します。

  1. WhiteBelt(初級)
  2. YellowBelt
  3. GreenBelt
  4. BlackBelt(上級)

同社は、2027年度末までに、この4段階のうち上位2段階に当たる「GreenBelt」以上の認定者を400人輩出することを目標に掲げています。技術の導入にとどまらず、それを使いこなす人材の育成を制度化することで、組織全体のAI実践力を底上げする狙いがあります。

まとめ:現実的なAI運用が示す未来

NTTドコモソリューションズの取り組みは、AIエージェントを単なる「便利なツール」として導入するのではなく、業務プロセスの変革、厳格なセキュリティ設計、そして人材育成までを包括したシステムとして捉えることの重要性を示しています。

業務の約30%をAIに委ね、復旧時間を34%短縮するという具体的な成果は、適切なアーキテクチャ選定(マルチエージェント構成)と、リスクを前提とした「最小特権の原則」に基づく設計があってこそ実現できたものです。今後、多くの企業がAIエージェントの実装を進める上で、同社の実践的なアプローチは非常に価値のある先行事例となるでしょう。

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